ST考察の見方 - 平均STだけでは選手のスタート力は比べられない

出走表の「平均ST」を6艇で見比べて、一番小さい選手が一番スタートがうまい——そう読んでいないでしょうか。
この読み方には落とし穴があります。STはコースによっても級別によっても平均が違うため、生の数値を並べると評価が逆転することがあるからです。
龍神レーダーのレース詳細「枠別情報」タブに追加したST考察は、安定率・抜出・出遅率の3指標を、同じコース・同じ級別の平均との差つきで表示します。
ST考察の3指標
その選手が本日入る想定コースでの過去の走りから、次の3つを集計します。
| 指標 | 定義 |
|---|---|
| 安定率 | そのレースでST順1位だった艇と比べて、0.05以内でスタートできた割合 |
| 抜出 | 自分より内側のすべての艇より、STが0.07以上早かった回数 |
| 出遅率 | ST順1位より0.1以上遅くスタートした割合 |
安定率は「スタートを他艇に揃えられるか」、抜出は「内を出し抜けるか」、出遅率は「置いていかれないか」です。平均STという1つの数字を3つの角度に分解したもの、と考えてください。
なぜ「平均との差」を併記するのか
コース別・級別に集計すると、スタートの揃い方には明確な差があります。以下は当サービスのデータ(2025年12月〜2026年9月、フライングを除く)の実測値です。
| 進入コース | A1の安定率 | B2の安定率 | A1の出遅率 | B2の出遅率 |
|---|---|---|---|---|
| 1コース | 74.4% | 56.5% | 9.9% | 22.9% |
| 2コース | 66.8% | 48.5% | 12.2% | 26.7% |
| 3コース | 71.0% | 53.0% | 10.0% | 23.3% |
| 4コース | 67.5% | 49.6% | 12.1% | 28.0% |
| 5コース | 65.1% | 52.1% | 13.8% | 26.0% |
| 6コース | 54.3% | 43.1% | 22.1% | 36.6% |
- コースによる差: A1級の中だけで比べても、1コースの安定率74.4%に対し6コースは54.3%と20.1ポイントの開き
- 級別による差: 1コースの中だけで比べても、A1級74.4%に対しB2級は56.5%と17.9ポイントの開き
2つの効果はほぼ同じ大きさです。 コースだけで補正しても、級別だけで補正しても足りません。両方を揃えて初めて「この選手個人がうまいのか」が見えます。
なおコース差は単調ではなく、3コースは2コースより安定率が高く、突出して悪いのは6コースだけです。この理由は当サービスでは特定していないため、画面でも機序の説明はしていません。
実例: 生の数値と評価が逆転する
冒頭の画像は2026年9月28日・多摩川2Rです。出遅率の欄を見てください。
| 艇 | 選手 | 級別 | 想定コース | 出遅率(生) | 同コース・同級別の平均 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3 | 久永祥平 | A2 | 3コース | 16.0% | 12.3% | +3.7pt(平均より悪い) |
| 6 | 倉田郁美 | B1 | 6コース | 23.5% | 33.0% | −9.5pt(平均より良い) |
生の数値だけなら「3号艇16.0%のほうが出遅れにくい」と読めます。しかし同じコース・同じ級別の選手と比べると、評価は逆になります。
同じことは他のケースでも起きます。当サービスのデータ全体から探すと、A1級・5コースで出遅率25.9%の選手と、B2級・6コースで26.0%の選手が見つかりました。生の数値はほぼ同じですが、前者は平均より+12.1ポイント悪く、後者は−10.6ポイント良い、という正反対の評価になります。
数値の羅列だけを並べると、この2人は「同じくらい出遅れる選手」に見えてしまいます。 ST考察が差を併記しているのはこの誤読を防ぐためで、画面では平均より良い側を緑、悪い側を赤で色分けしています。
抜出は「率」ではなく「回数」で出している
3指標のうち抜出だけは、パーセントではなく実回数で表示しています(例: 1回 / 平均2.1)。外のコースほど抜出が起きる回数が極端に少ないためです。
| 進入コース | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30走あたりの期待回数(A1級) | 2.3回 | 1.1回 | 1.3回 | 0.4回 | 0.2回 |
レース詳細で見る個別選手のコース別の走数は20〜35走程度です。5・6コースの期待回数は0.2〜0.4回しかないため、率にすると「0.0%が並ぶ無意味な列」か「1回起きただけの出来事が3.3%に見える誤認」のどちらかになります。そこで主表示を回数にし、同じコース・同じ級別の期待回数を添えました。なお1コースは内側に艇がないため算出対象外(「—」表示)です。
フライングの扱い
フライング(F)した走は、3指標の母数からもST順1位の基準からも外しています。
フライングのSTは公式データ上マイナス値ではなく正の値で記録されるため、そのまま集計するとF艇が必ず「ST順1位」になります。実測では、これを放置した場合同じレースの他艇の安定率が62.9%から21.9%へ41ポイント落ちました。失格するほど早い艇を基準にすると、「スタートを揃えられたか」という指標の意味が壊れます。
ただしフライング歴を隠しているわけではなく、級別セルの中にF数バッジ(F1は金、F2は赤)を表示しています。安定率が高く抜出が少ない選手が「F持ちで慎重になっている」のか「もともと安定している」のかは、2つを並べて初めて読めます。F持ち選手の狙い方はフライング・出遅れ後の選手を狙えでも解説しています。
ST分布とST履歴

グリッドの下の「ST分布」を開くと、選んだ選手のSTが0.05刻みのヒストグラムで表示され、同じコース・同じ級別の平均の分布が薄い棒で重なります(母数が桁違いなので、どちらも割合に直しています)。
平均STという1つの数字だけでは、「いつも0.15前後で揃えている選手」と「0.08と0.25を行き来する選手」の区別がつきません。分布で見れば、その選手のスタートの癖が読めます。「ST履歴」を開けば、そのコースから出走した全レースの日付・会場・ST・ST順・着順が新しい順に並びます。
活用のポイント
想定コースが変われば前提が崩れます。 ST考察は「本日入る想定コースでの成績」です。枠なり進入率もあわせて表示しているので、進入が読みにくいレースでは枠なりとは?進入予想のコツの観点と合わせて確認してください。
走数が6未満のセルは参考値です。 その場合は値が注意色(オレンジ)で表示されます。1走の出来事が数値を大きく動かすため、差の大きさをそのまま信じないでください。
予想ではなく実績の集計です。 級別によるスタート傾向の全体像はA1級とB2級、平均スタートタイミングは1.27倍差でも解説しています。
よくある質問
ST考察はどこで見られますか?
各レースの詳細ページを開き、タブの「枠別情報」を選ぶと、コース別成績の下に表示されます。
「安定率」はST順1位の選手も対象ですか?
はい。ST順1位の艇は自分自身との差が0になるため、0.05以内の条件を満たし、必ず対象に含まれます。
なぜ級別まで分けて平均を出しているのですか?
級別を無視した平均を使うと、B2級の選手は何コースでも「平均より悪い」、A1級の選手は何コースでも「平均より良い」と出てしまいます。それは選手個人の巧拙ではなく級別をもう一度表示しているだけです。コース別・級別の24区分すべてで1,000走以上のデータがあることを確認したうえで分けています。
集計期間はいつからいつまでですか?
当サービスがデータを保有している全期間です。カード上部に「集計期間」として実際の日付が表示されます。期間を絞り込む設定はありません。
出遅れ(L)は含まれていますか?
出遅率はST値から計算しているため、公式の出遅れ判定とは別の集計です。STが記録されていない走(欠場など)は自然に母数から外れます。
まとめ
- ST考察は安定率・抜出・出遅率の3指標で、平均STを3つの角度に分解したもの
- 安定率と出遅率には同じコース・同じ級別の平均との差を併記している
- コースによる差(A1級で1→6コースが20.1pt)と級別による差(1コースでA1→B2が17.9pt)はほぼ同じ大きさで、両方揃えないと選手個人の力は見えない
- 生の数値では「3コース16.0%」が「6コース23.5%」より良く見えても、補正すると評価が逆転する
- 抜出は外のコースほど起きないため、率ではなく実回数で表示している
- フライングの走は母数から外し、F数は別にバッジで表示している
平均STの数字を6艇で並べて終わりにしていた方は、一度ST考察の「差」の行まで見てみてください。同じ数字でも意味が変わります。
タグ: #新機能 #ST考察 #スタートタイミング #データ分析 #龍神レーダー